第14章 ・落し物お届けとその後
若利は答える。それだけでは言葉が足りない事には気づかない。文緒を物体扱いしているつもりはないのは事実だ。それにしても、
「そこのお前は何を笑っている。」
ふと若利が気づけば日向の付き添いをしている縁下が微笑んでいた。
「いえ、何も。」
若利は不審に思ったが意外と相手はその内を読ませない。
「まあいい。これは文緒に渡しておく。」
「お願いします。」
ややむすっとした顔で言う日向を他所に若利は受け取った飾りをジャージのポケットに突っ込んだ。
「俺はもう行く。それと」
続く言葉は若利にすれば我ながら何故口にしたのかよくわからなかった。
「文緒の事に踏み込むな。」
日向が何か言いかけるが縁下が押し留めた。
「お時間頂いてすみません、じゃあ俺らは失礼します。ほら、日向、影山。」
「失礼します。」
「っす。」
縁下が日向を押しつつ烏野の3人は去っていく。残った若利は1人呟いた。
「文緒を1人にはしておけんか。」
自分で言っておきながら若利は俺は一体何をと驚く。首を左右に振って若利はまたタッタッと走り始めた。
若利が学校に戻っている間の事だ。
「何だよウシワカは。文緒さんの事嫌いなのかよ。」
歩きながら膨れて日向が呟き、それを聞いた縁下が微笑む。
「逆だよ、日向。」
「え。」
「あの人はきっと文緒さんが大好きなんだと思うよ。」
「どうして。」
「日向と妹さんが会った話聞いてないって言ってたあたりから拗ねたみたいな顔してたから。」
「全然顔変わってないように見えたっすけど。」
「影山はそういうの読み取れねーじゃん、バレーの時以外よ。」
「んだと日向ボゲェッ。」
「はいはい揉めない。とにかくね、わざわざ妹さんの役目は自分の話し相手だって言ってた。本当に話したくない相手にそんな事させないだろ。」
「踏み込むなってのは何なんだろ。」
ボショリと言う日向に縁下はアハハと笑った。