第13章 ・変人コンビとの邂逅
文緒は一連の様子をキョトンとした顔で眺めつつも影山少年の悪口がボゲばかりな点を突っ込むべきか思案する。しかしそれより怒られっぱなしの日向のフォローが先だと気がついた。
「あ、あの、」
知らない上にでかい野郎に話すのはかなり勇気が要ったが文緒は何とか言葉を繋ぐ。
「すみません、私がつい話し込んでしまって。」
影山少年は、あ、と低く唸って文緒を見る。目つきが悪い。怒っているのか義兄のように顔に出にくいタイプなのかも判断しづらい。
「誰だアンタ。」
文緒が答える前に日向が言った。
「白鳥沢の人。ウシワカの妹だって。」
「なっ。」
「牛島文緒と申します、1年です。以後お見知りおきを。」
影山が固まった。しばし彼は黙りこくり、しかし顔は明らかに何やら思う所がたくさん渦まいているような様子だ。やがて彼は重々しく口を開く。
「影山飛雄、一年。セッターだ。」
「なかなか大事なお仕事。」
「わかんのかっ。」
「クラスに兄様と同じチームの人がいてバレーボールの事チョコチョコ教えてくれてる。脱線もしょっちゅうだけど。」
「なあなあ文緒さん、俺は何に見える。」
「うーん、兄様とおんなじウィングスパイカー、かな。」
ピョンピョンする日向の様子を見て文緒は言ってみた。
「うっ。」
涙ぐむ日向に文緒は慌てたが実際の所は大したことがない。
「初めてマネージャーとか控えとか言われなかったっ。」
「ええと、そっちなんだ。」
「でもハズレー、俺ミドルブロッカー。」
「それはそれで凄いね。」
「そお、そお。」
大変嬉しそうに聞いてくる日向に文緒は正直に頷く。
「つかアンタ、本当にあの人の妹なのか。」
影山が言った。
「全然似てねえ。」
よくあることだ、文緒はああと呟く。
「義理の兄妹だから。」
影山が固まった。
「正確には遠い親戚なんだけど数えるの大変なくらい遠くてほとんど他人レベル。」
「何で、兄妹に。」
「影山お前っ、それでりかしーがないって言うんだぞっ、女子に嫌われるやつなんだぞっ。」
日向が慌てて突っ込むが幸い相手は義兄にすら少々変わっていると言われる牛島文緒である。