第12章 ・瀬見英太のお節介とその他
「それより工から聞いたぞ、お前クラスで何か浮いてるみたいだな。特に女子連中から。」
「訳あり全開なタイミングでこちらに来た上にこの態度物腰です、無理も無いかと。」
「さらりと言うのな。」
「前のところでもありました。両親が比較的厳しくて当世風じゃなかったからでしょうね、お高く止まっているとかぶりっ子とか色々言われまして。私は特にぶりっ子している訳ではなくて、単に当世風の物がたまたま好みで無いことが多いだけですがなかなか理解してもらうのは難しいですね。」
「うん、それもあるとは思うけどよ。」
瀬見は紙パックの飲み物をジューとすする。
「他に何かあるでしょうか。」
首を傾げる文緒に瀬見はハァとため息をついた。
「やっぱり気づいてねーのな。」
文緒は困ってしまい、ええと呟いてとりあえず弁当を食しにかかる。しばしの沈黙が重い。やがて瀬見はボソリと言った。
「お前多分嫉妬されてるぞ。」
「え。」
何故と問う前に瀬見は言う。
「当然だろ、あの若利の妹になったんだから。」
「あの申し訳ありませんが、話が見えません。」
「だあああっ、お前らほんっとそういうトコはそっくりだなっ。」
瀬見は頭をかきむしる。
「あのな、若利何気にモテんだよ、当人まーったく感知してねーけどな。そこへ一番近い位置にお前が来たんだ、ここまでいや流石にわかるだろ。」
「しかし私は妹です。」
「義理のだろ、親戚つってもほぼ他人レベルらしいじゃん。」
うーんと文緒は唸る。
「とは言うものの兄様はあの通りでやっとこさ私と話すようになってくれたとこなのに。」
「外からじゃわかりゃしないからな。知らねぇ奴は好き勝手言うさ。」
「それはわからなくもないですが」
文緒は目を伏せた。どうやら自分は思わぬ部分で敬遠されているようだ。
「私に何が出来るのやら。そのままでいる事しか出来ない気がします。」
「そうやってなんだかんだ言いつつ無理矢理自分を殺そうとしねえのがお前らしーわ。」
「いけないでしょうか。だって私は向こうに対して危害を加えた訳じゃありません。」
「いーんじゃねえの、少なくとも俺は嫌いじゃないけど。」
紙パックの飲み物を飲みきって言う瀬見に文緒は目をやる。