第11章 ・おかしな届け物
若利が帰宅してからの事である。
「兄様、今日は申し訳ありません。」
またも若利の部屋にて正座した文緒が言った。
「こちらは問題はない。山形が助かったと言っていた。」
「そうでしたか、良かったです。」
「だが何故お前が持ってきた。」
「今頃お尋ねになりますか。」
流石に文緒はボソリと突っ込んだが若利は何かおかしなことを言ったかと言いたそうな顔をしている。文緒はそれ以上突っ込まずに事情を説明すると奇妙な事が起きた。若利があからさまに嫌な顔をしたのだ。
「あの兄様」
「何だ。」
「お顔がその、凄く嫌そうな感じに。」
「ああ、すまない。」
我に返ったように若利は呟く。
「ついな。」
まさかこの義兄からついなどと聞くとは思わなかった文緒は驚いた。もしかしてボールがすっ飛んできた件があった為に心配してくれているのだろうか。
「兄様、あの」
文緒はドキドキしながらも聞いてみた。
「私に何かあれば気になりますか。」
「まだわからん。」
若利は言い、文緒はそうだろうと思ったなどと考える。しかし若利の言葉には意外にも続きがあった。
「ただ、平気ではおれない気はする。そこまでは来ている。」
「そうですか。」
「お前はどうなのだ。」
「やめてください、兄様に何かあったらなんて考えたくもありません。」
文緒は感情のままつい口走った。
「私は既に両親を亡くしました。これ以上家族に何かあるなんて考えただけで恐ろしいです。」
「そうか。」
我慢しきれずうっかり涙ぐんでしまった文緒に若利は言った。
「すまない。」
「いえ、私こそ。」
文緒は激しく後悔する。こういう所を若利に見せてしまうとは何たることか。
「文緒。」
「はい、兄様。」
「俺は無事でいる。」
「はい。」
「信じていろ。」
急に言われて文緒はキョトンとした。しかし、はいと頷いて上げた顔は自然にほころんでいた。