第11章 ・おかしな届け物
その頃、男子バレーボール部では案の定山形が頭を抱えていた。
「やっちまった。」
「隼人君、どしたの。」
「ケータイ教室に忘れてきた。」
「お前またかよ、いい加減何か対策しろ対策。」
呆れたように言う瀬見に山形はうっせぇわかってるよと呟く。
「うーん、今から教室に取りに行ってる余裕ねぇしなぁ。」
「諦めろよ、練習終わってから教室見に行けって。運良くパクられてなきゃそのままだろうし。」
「だな。でもなー、誰かうまい具合に届けてくんねーかなぁ。」
「非現実的ですよ、山形さん。瀬見さんの言ってる通り少なくとも今は諦めるべきでしょう。」
「賢二郎に言われちゃしょうがねぇな。」
山形は呟いて着替えにかかる。
この間、牛島若利は何だか騒がしいなという程度にしか考えていなかった。
なんやかんやしている間に若利の義妹、文緒はトテトテと男子バレー部が練習をしている体育館へ向かっていた。部室へ向かおうとしたら少し迷った為に時間がかかり、ついたら既に鍵がかかっていて誰もいなかった。これ以上人様のケータイを持ったままウロウロしたくはないので結局怖いけど体育館へと腹を決めたのである。白鳥沢の敷地は広い。一度部室に寄った分少し疲れてきたところで体育館にたどり着いた。
「これは難しいな。」
文緒は1人呟いた。出入り口は開いてたが音からして練習真っ只中、部外者が首を突っ込んで誰かを呼び止められる状況ではない。何より監督の鷲匠の声がおっかなかった。困ってしまった文緒はとりあえず隙が出来るまで待とうとそのまま出入り口の側に座り込んだ。正直目立つが当の文緒は気がついていなかった。