第53章 ・思い、請い、誓い、そして
「ロリとは人の名か。」
「もともとはアメリカの文学作品のキャラの名前です。まともに読んだ事はありませんが愛称がロリータだとか。」
「そうか。」
「転じて人を惹きつける魅力がある年若い女の子を言うようになったそうですが私はち」
勿論文緒は私は違いますと言いかけたのだがよりにもよって若利はなるほどと呟いた。
「今回に限り言い得て妙だ。」
「兄様落ち着いてください。」
「落ち着いている。」
「ちっとも言い得てません。」
「何故だ。」
「私は別に人を惹きつけてなどいません。兄様は愛してくださいますが後は極一部の方です。」
ところが若利は眉根を寄せる。
「他がお前を愛らしく思わないと何故言い切れる。現に前例があるだろう。」
「それは極一部の方に入るかと。」
「聞くつもりはない。」
「何て事。」
言う文緒の頭に若利の大きな手がボフッと置かれた。
「この話になるとお前は途端に聞き分けが悪くなる。らちがあかない。」
「お気を悪くされたのですか。」
「そうではない。」
若利は呟く。
「俺が愛しているのだからそれ以上言う事はない。そう思っただけだ。」
「兄様。」
「はたして許されるだろうか。」
「私はそう信じたいです。」
「そうか。」
若利の顔は相変わらず変化が乏しいが文緒は義兄からどこか安心したような雰囲気を感じた。
「参りましょう、兄様。」
「ああ。」
そうしてしばらくすると兄妹は長い階段を登り、とある墓の前にいた。
「この所は誰も来ていなかったようですね。」
ゴミを拾い、持ってきた袋に放り込みながら文緒は言った。義兄の若利は手伝いながらああと呟き、振り向く。その視線の先には墓石、刻まれた姓は牛島家に来る前までの文緒のものと一致している。
「不思議なものだ。」
「どうされました。」
首を傾げる文緒に若利は続ける。
「他所から妹を貰ってこうしてその妹と墓参りに来る事になるとは少し前まで想像もしなかった。」
「私もです。まさか両親が亡くなってから兄様のもとへ来る事になるとは思いませんでした。」
若利はそうかと呟いた。
「すまない。」
「え。」
急に謝られて文緒がキョトンとする。