第51章 ・TVゲーム その3
「牛島さん」
川西はプレイ中の若利に言う。
「お嫁さんが大変な事に。」
「まだ嫁ではないと言っている。」
「マジでいずれ嫁にするつもりなんか。」
「胡乱(うろん)な輩に渡すより安全だ。」
「シスコン宮城代表だね、若利君。」
「天童、お前はお前で喋んな。」
瀬見と天童がやり取りしている間に若利はパッドを置いて後ろを振り返る。
「それで川西、文緒がどうした。」
「観戦してる間に寝ちゃいました。」
確かにそこには座ったまま頭をこっくりこっくりさせている義妹の姿がある。おまけに
「さっきから俺の方にもたれてきて、これどうしたらいいんですかっ。」
顔が真っ赤な五色は気の毒としか言いようがない。邪険には出来ないしさりとてうかうか触るのも気が引けたのだろう。
「すまない。」
若利は立ちあがり、そっと眠ってしまった義妹の肩を掴む。また五色の方に傾くのを抑えたところで若利はひょいと義妹を抱きあげた。文緒に配慮して騒ぎこそしなかったものの野郎共は固まる。若利はまったく気にせずに文緒を一旦部屋の隅に退避させて仲間の方に向き直った。
「そろそろお開き、かな若利君。」
「ああ、」
天童に言われて若利は頷いた。
「せっかくだがすまない。」
「いーんじゃね、少なくとも俺は十分楽しんだ。」
山形がニヤッとする。
「おうよ、文緒も珍しくはしゃいで疲れたっぽいしな。」
瀬見がしょうがねえなぁと苦笑して文緒の方にチラリと目を向ける。
「お、俺も面白かったです。文緒には結構やられたけど。」
「一番うるさかったもんな、工。」
「川西さん俺はうるさくないです。」
「お前それ今度あの嫁起きてる時に聞いてみろよ。」
「わかりました、白布さん。」
「真面目系馬鹿がいた。」
「さあ、それじゃあそろそろ片付けようか。」
大平の一声で野郎共は文緒が起きないよう配慮しながら片付けを始めたのだった。