第51章 ・TVゲーム その3
容赦なく表示されるゲームオーバーの画面に文緒も呟いた。
「やったあああ、今日も俺サイコーっ。」
「流石ですね、天童さん。」
微笑んで小さく拍手をする文緒に天童はでもさ、と呟いてキロリと視線を向ける。
「ほんっとしぶといよね、文緒ちゃん。最低でも2連鎖するんだもん。」
「せめてそれくらいは。」
「てゆーかさ、本当にちょっとやったことあるだけなの。なーんか疑わしいんだよね。」
「これは異なことを。」
「説得力皆無だな。」
「あら、白布さんまで。」
「俺だって思うぞっ。」
「五色君もか。」
珍しく白々しい文緒を義兄の若利含めチームの連中はじっと見つめる。
「何と申しますか」
文緒はしれっと言った。
「このゲームの古いバージョンだけこっそりやってました、パソコンで。」
「そらやっぱり。」
白布が呟く。
「んじゃ何でちょっととか言ったのさー。」
「新しいバージョンは全然やってませんしご覧の通り圧倒的火力はありませんし、積み込みスピードは遅いですしパッドでやった事はありませんでしたから。」
「文緒、」
とうとう若利が重々しく言った。
「それはちょっととは言わない。」
「何て事っ。」
文緒は飛び上がり、周りの野郎共は若利が突っ込んだと驚くのであった。
それからどれくらい遊んでいただろうか。勝敗は誰もいちいち数えていない。組み合わせを変えたりゲームルールを弄ったり、コンピュータ対戦をやってみたり、ただ無心に好きなように遊んでいた。
「おっし、キタァッ。」
「なかなかの攻撃だ、瀬見。」
「冷静か。」
「普通だが。」
「悪い、ど天然だった。」
「そこはかとなく納得がいかない。」
「ちょっと2人とも、コンピュータが仕掛けてるよー。」
「問題ない。」
「こいつの思考ルーチンなら余裕だろ。」
若利達がコンピュータを交えての対戦をしている間、後ろでは妙な事になっていた。
「工、さっきから何ゴソゴソしてんの。」
「川西さん、う 、その、文緒が」
川西に尋ねられた五色が顔を赤くする。気がついた川西はあ、と呟いた。