第48章 ・負けず嫌い
「俺閃(ひらめ)いちゃった。」
大平が嫌な予感しかしないなぁとボソッと言うのをよそに天童は話を進めている。
「若利君ち、結構でかいTVあったよね。」
「ああ。あまり使っていないが。」
「今度の休みさ、皆で若利君ちに集まろうよ。」
「ちょっとちょっと天童。」
「うちは構わんがどういうつもりだ。」
「せっかくだから皆でゲーム大会っ。あ、文緒ちゃんもね。」
「私もですかっ。」
まさかの巻き込まれに油断していた文緒は声を上げた。一体天童は何を考えているのか何も考えていないのか。
「ちょっとでもやってたんでしょ、見てみたい。」
あまり考えていないという事はよくわかったと文緒は思う。
「あ、ゲーム機とソフトは俺がちゃんと持ってくるからノープロブレム。」
「いやむしろお前が中心でやらかす所にメニィプロブレムズ(many problems)だわ。」
瀬見が返し文緒は慌てる。
「しかし先ほども申しましたとおり私は下手です。家庭用ゲーム機のジョイパッドは扱えません。」
「いいからいいから、楽しめばいいのよ。」
「うちに来るのもTVを貸すのも構わんが俺は参加しないぞ。」
若利ですら馬鹿馬鹿しいと言いたげに呟いた所で天童はニィと笑った。やはりguessではなくどこか本当のゲスっぽい。
「あっれぇ、兄妹揃ってそんなに自信ないのー。若利君まで何か弱気だねぇ。」
「天童、よしなさいって。」
大平が慌てて言うが天童は止まらない。しかもまさかの状況になった。
「いいだろう。」
「承知しました。」
背景が揺らめきゴゴゴという音が聞こえそうな雰囲気を背負って義兄妹は同時に言った。
「受けて立つ。」
「受けて立ちましょう。」
「乗りやがった、この馬鹿兄妹っ。」
瀬見が叫ぶ。
「まさか妹も乗るとはなぁ。」
山形が呟くと五色がいやそうでもないですと言った。