第48章 ・負けず嫌い
それは天童覚のしょうもない発言から始まった。
「若利君と文緒ちゃんてゲームしたりするの。」
とある放課後、練習が若干早く終わったバレー部の連中とたまたま文芸部の活動が終わった牛島文緒が一緒に帰っていた時のことである。
「天童さんそれはTVゲームの類ですか、それとも。」
若利が口を開くより早く文緒は言う。先に義兄に喋らせ盛大な天然ボケをやらかされてはたまらないと判断したのは賢命だ。牛島家に来てから何とか義兄のボケに対応したいと努力した賜物であろう。
「ん、TVゲームの類。」
対する天童は気にせずさらりと答える。
「兄様はやりません、私はパソコンのゲームなら少しだけやったことがあります。ゲーム機のジョイパッドは扱えません。」
「知らなかった。」
「あらら、若利君も知らなかった事実発覚。」
「下手ですしやるゲームは極々限られてますし兄様のお耳に入れることもないと思って。」
「そうか。」
「しかし天童さん、何故そのようなことを。」
尋ねる文緒に天童はんーと呟く。
「何となく。若利君も文緒ちゃんもザ・古風って感じでそういうのに縁がなさそうだなあって思って。でも文緒ちゃんがちょっと触れてたのは予想外だった。」
「両親の目をごまかすのが大変でしたが。」
「お嬢様は意外とやる件。」
川西がボソリと呟く横では白布がどーりでと呟く。
「それで牛島さんにもちったぁ文句言えたのか。」
「あの白布さん、つまりどういう事なんでしょう。」
恐る恐る尋ねる文緒に白布はフンと鼻から息を吐く。
「基本押し込められても黙って従ってるだけだと思ってた。だから牛島さんがおかしな事した時文句言ったって聞いて驚いた。」
「白布、お前誰相手でも容赦ないな。」
ボソッと瀬見が呟くが白布は勿論聞き流す。
「賢二郎が文緒さんを褒めた。」
「本人もいる前で変なこと言うな、太一。」
「事実じゃん。」
「その、ありがとうございます。」
「別に。」
ブツブツ言う白布の顔は少し赤い。一方天童があ、と声を上げた。