第45章 ・義妹の反抗 その3
そのつもりはなく口をついて出た疑問はしかし若利を困らせたようだった。しかし文緒は自分で自分の口を止められない。
「私だって兄様を悲しませたくはありません、この所の事を考えればご心配されるのもわかります。ただ、少ないながらも自分から動きたい事もあります。」
そして文緒はとうとう義兄の方を振り向いて言った。
「兄様はどちらが良いですか。ただただ兄様の言う事を聞くだけの私が良いのか、自分でも歩ける私が良いのか。」
若利の目が見開かれた。
「俺は」
若利は呟く。答えを聞いた文緒は思わず若利に抱きつき、若利は突き放さずにそんな義妹を抱きしめる。そうして夜は更けていった。
「そんで待たされるのは免除になったのか。」
次の日、1-4の教室にて五色が言った。
「うん。」
文緒は頷く。
「思ったより早く話ついたんだな。瀬見さんがお前に折れるなよって言っとくとか何とか言ってたけど。」
「それはメールでもらった。」
「そっか。」
呟く五色に文緒は微笑み、手にした書類に目を落とす。
若利が文緒を待たせるのを撤回した後、2人はこんな話をしていた。
「兄様。」
「改まってどうした。」
「実はそろそろ部活に入ってみようと思うのですが。」
「何かやりたいことがあるのか。」
「興味ある所があります。編入時期が中途半端だったので正直躊躇(ちゅうちょ)してましたが。」
「物は試しだ。関係者に聞いてみるといい。」
「はい、兄様。」
そんな会話を思い出しながら文緒は書類に必要事項を書き込む。
書類の表題には文芸部入部届と書かれていた。