第43章 ・義妹の反抗 その1
「兄様っ。」
「だああああっ、あの馬鹿っ。」
文緒が叫び瀬見が突進しそうな勢いになる。
若利は小さな子供にするかの如く義妹を持ち上げていた。周囲の笑うまい事か。
「兄様、降ろしてくださいっ。」
流石の文緒もバタバタする。
「承知するまで降ろさない。」
「皆さん見てますっ、兄様も誤解されますっ。」
「誤解とは。」
「ああもうっ。」
義兄の鈍感ぶりにたまりかけねた文緒がとうとう苛立った声を上げた。それでもまだ控えめなのが文緒らしい。しかし状況は勿論よろしくない。
「おいこれ俺ら出るべきか。」
バレー部の野郎共がボソボソ相談を始める。
「英太君、行ってきたら。」
「でも大丈夫なのか、騒ぎでかくならね。」
「山形の言うのもわかるけどよ、今の状況で俺ら以外に若利止められる奴いねえだろ。」
「若利、ホント何でこうなるんだよ。」
「獅音、嘆かない嘆かない。」
「わかったらちがあかねえ、もう俺行ってくる。」
そうしてとうとう瀬見が出動した。
「こら若利っ、何やってんだよ降ろしてやれっ。」
「瀬見か。生憎これはうちの問題だ。」
「それはそーだけどとりあえず降ろしてやれ見てる方も恥ずかしいわ首傾げるなキョトンとすんなお前色々誤解招くっつーのっ。」
「誤解とは。」
「聞き返すなここで言わせんなとりあえず降ろしてやれっ。」
瀬見が入ったせいで野次馬共が更に加熱した。恥ずかしさが頂点に達した文緒は半泣き状態である。流石の若利も騒ぎがでかくなってきたのを感じたようだ。
「よくわからないが瀬見がそこまで言うなら仕方ない。」
やはりあまり顔つきが変わらないままに渋々といった様子で若利は文緒を降ろした。
「申し訳ありません瀬見さん、先日に引き続き。」
ペコペコ頭を下げまくる文緒に瀬見は同情を禁じえない。
「いいって、ほれ早く戻れよ。」
「はい、失礼します。」
言って文緒はパタパタと駆け出す。野次馬をしていた連中が一斉に文緒に注目するが文緒は行く手に固まっている連中に言った。