第42章 ・【外伝】イモウト探し
「おい若利ー、気持ちはわかるけどとりあえずおろしてやれ、通報されたらたまんねーから。」
「何故だ。」
「ほれやっぱり。いっつもこれだ。」
「苦労なさってるんですね。」
「わかるか。文緒が絡むと途端に馬鹿になるからよ。」
「兄様、そろそろ下ろしてくださいな。」
「わかった。」
文緒に言われてウシワカは抱き上げていた文緒を下ろす。
「しかし文緒、連絡もよこさず一体どうした事だ。」
「申し訳ありません兄様、本屋に寄ってついでに他に寄っていたら時間が経ってしまって。勿論連絡しようとしたんですが知らないうちに電話の電池が切れてました。」
「叱ってやんなよ、若利。」
瀬見が口を挟む。
「こいつそれで公衆電話とか充電サービスやってる店ないか探したりしてたんだからな。あと何だっけ」
「無線LANが使える所を探しました。結局どれもこの辺りにはなかったんですけど。」
「前の2つはわかるが最後がよくわからない。」
首を傾げるウシワカにああと思った縁下は文緒に尋ねる。
「文緒さん、タブレットか何か持ってるの。」
「これです。」
文緒が鞄から取り出したのは携帯型映像機器だ。それでも首を傾げたままのウシワカに縁下は解説した。
「ネット使える所探してあの端末からメール送ろうとしたみたいです。セキュリティ面のリスクがあるので本当は微妙な所ですけど。」
「そうか。」
ウシワカはやっとわかったらしい。
「んで、ウロウロしてた所俺が拾った訳。迷子札見るまでもなかったな。」
「迷子札呼ばわりはやめろ。」
「無理言うなこのヤロ。おい外からみてどう思うよ。」
「妹さん思いなのは伝わります。」
「お前上手い事言うのな。」
瀬見はチラリと縁下を見る。
「俺は別に。」
言う縁下にまあいいけどよと瀬見は呟いた。
「サンキュな。若利1人だったらあらぬ所探してるとか訳のわかんねー事になってたかも。」
「本当に大変そうですね。」
「それな、兄妹揃ってど天然だから間入ってやんないと危ねえ。特に文緒。」
言う瀬見の表情に縁下は気づいた事があってふと微笑む。