第42章 ・【外伝】イモウト探し
「菅原さん、今ちっといいですか。え、大地さんと旭さんも一緒。ほんとすみません、いや聞きたいことが。文緒さん見ませんでしたか。そうですあの天然お嬢様、ってやめてくださいっ今牛島さん本人がいるんですっ。近くに出かけると言って帰ってこないらしくて携帯もつながらないしで、ええそうです、何かドッグタグみたいなペンダントしてるそうなんですぐわかるかとあのお気持ちはわかりますけど笑っちゃダメです。はい、ありがとうございますお願いします。」
縁下は電話を切りハァとため息をつく。傍ではウシワカも電話を切ってその液晶画面を見つめている。
「手がかりなし、か。」
「行き先をきちんと確かめなかったのは迂闊だった。こちらの落ち度だ。」
「もうちょいうちのチームの連中に聞いてみます。」
「ああ。俺も後1人に連絡してみる。しかし」
ウシワカは呟いた。
「不思議なものだ。」
「何がですか。」
「こうして文緒を通じてお前と話している事が。」
「人生何があるかわかりませんね。」
「文緒が似た事を言いそうだ。」
「あはは、確かに。」
縁下は笑い、ウシワカは一瞬笑ったようなそうではないような微かな表情の変化を見せて早速またチームメイトへの連絡を始める。縁下も次は影山か月島あたりかなと思いながら電話帳を呼び出す。その間にウシワカが話す声が聞こえた。
「もしもし。」
今度の相手は少々声がでかかったようだ。話している声が何となく聞こえて縁下は後輩の影山に電話しようとしていた手を思わず止める。
「瀬見、急にすまない。」
「おう若利丁度いいや、俺もお前に電話しようと思ってたとこ。で、どうした。」
「うちの文緒を知らないか。出かけると言ってまだ帰らない。」
「文緒。」
瀬見と呼ばれた相手が疑問形で言う。
「文緒なら今隣にいるぞ。つかそれでお前に電話しようと思ってたんだけどな。」
顔は変わらないまま若利がピクリとし縁下は目を見開いた。
「迎えに行く。今どこだ。」
電話に向かって言うウシワカの口調は僅かに急いでいる感がある。居場所を聞いたウシワカはすぐ電話を切って縁下に言った。