第40章 ・【外伝】 女神と天使と天然お嬢様
逃げながらもどうしようと思った。知らない子に助けてもらってしかもその子を置いてきた。ひどいことはされないと思うがしばらくは面倒くさい事になるだろう。
「あっ、清水先輩っ。」
清水を待っていた谷地が声を上げる。
「遅かったのでそろそろメールしようかと思ってましたっ。」
「ごめんね、心配かけて。ビラの原稿やっぱりあのコンビニのコピー機に置いてきてた。」
「いえ、回収できて良かったです。」
しばし2人は沈黙する。
「あ、あの」
ためらいがちに谷地が言った。
「何か、その、あったんですか。」
谷地に心配されるくらい顔に出ていたらしい。
「うん、実はね」
清水は事の次第を話した。
「えええええええっ。」
話を聞き終えた谷地はそれはもう可哀想なレベルで動揺した。
「そそ、そんなことがっ。」
「その子は先に逃がしてくれたけど悪い事しちゃった。どうしよう。」
「も、戻りますか。ひょっとしたらもう事は収まってるやも。」
「そうだね。」
清水は決めた。中学生か高校生かわからないような子を置いていったままはやはり気がひける。
「行ってくる。」
「私もお供します、行きましょうっ。」
2人はパタパタと道を戻り始めた。
戻ってみたらあの少女は照島とやり取りをしていた。
「やってくれたな、ロリちゃん。」
「私はロリータではありません。」
「どう見てもチビじゃん。」
「ああ、ロリータ(Lolita)が元は何かご存知ではないんですね。」
「じゃあ名前はなんてえの。」
「チビの名を聞いてどうなさるんです。」
「可愛くねー。」
ひどい言いようだがおそらく照島は悪気がない。
「あれ、つかそれ白鳥沢の制服。」
照島が言い仲間もマジでと反応、ウシワカのいるとこじゃんと言い出すのもいる。
「まあ何と申しましょうか、」
ここで少女は静かに言った。
「名乗るほどの者ではありませんが」
「厨二かよ。」
突っ込んでくる相手に少女はにっこりと笑いかけた。
「私はウシワカの妹です。」
ピタと一瞬時間が止まったような雰囲気になった。
「ししし清水先輩、今の聞こえましたか。」
「聞こえた。そっか、あの子が縁下も言ってた天然お嬢様。」
「確かにさりげない高級感が。」
清水と谷地が物陰に隠れてひそひそと話している間にも事は進行していく。
