第40章 ・【外伝】 女神と天使と天然お嬢様
「それでは失礼します。」
固まってしまった野郎共の隙間をウシワカ妹はするりと潜り抜けた。あ、こっち来ますよと谷地が呟いている間にウシワカ妹は清水達が潜んでいるあたりを通り過ぎる。興醒めした条善寺の連中も去っていったタイミングを見計らって清水と谷地は少女の後を追った。
「あのっ。」
清水が声をかけるとウシワカ妹は足を止めて振り返った。
「ああ、先程は勝手に失礼しました。ご無事なようで何よりです。」
ウシワカ妹はにっこりと微笑む。
「ありがとう、すごく助かった。」
清水は言い、
「本当にありがとうごさいますうううっ。」
谷地もうわああんと言った調子で声を上げる。
「おかげで清水先輩無事でしたあああっ。」
「どうかお気になさらず。お美しい方は大変ですね。」
「ところでさっき聞こえちゃったんだけど、貴方あのウシワカの。」
「あら、兄をご存知ですか。」
ウシワカ妹はあまり驚いた様子もなく言う。
「私烏野バレー部のマネージャー、清水潔子。」
「や、谷地仁花でありますっ。1年です。」
「これはご丁寧に。牛島文緒と申します、私も高1です。日向達にはお世話になってます。兄の若利はどうも天然でわかりづらいかもしれませんがどうかよろしくお願いいたします。」
丁寧にお辞儀する牛島文緒に谷地がほあああと息を吐く。
「本当にお嬢様だぁ。」
「いえ私は別に。」
「流石縁下が言ってただけある。」
「縁下さんは何をっ。」
牛島文緒はゲーンッとなる。その様子がおかしくて清水はついクスリと笑った。
「天然お嬢様って言ってた。」
「兄のお仲間にも言われますが皆さんあんまりです。というか縁下さんに言われるのが一番きつい。」
「縁下さんって一体。」
「一目置かれてるみたいね。」
「流石縁下さん。」
谷地が呟く一方、牛島文緒はああと頭を抱える。
「兄様が聞いたら何と言うやら。」
「兄様。」
吹きそうになる谷地を責める事は出来ない。