第40章 ・【外伝】 女神と天使と天然お嬢様
烏野高校男子排球部3年マネージャー清水潔子はぶっちゃけ絡まれていた。一度試合をした条善寺高校のバレー部の野郎共である。これで声をかけられてしまうのは3度目、他の奴ならスルーして終わりだがどうもこいつらはしぶとい。排球部の野郎共が一緒にいない、しかも他で後輩の谷地仁花を待たせているタイミングなのが不幸すぎた。自覚がない美少女はいつも難儀だ。
ともあれ条善寺の連中は本日もなかなか折れなかった。目をそらし何とか抜けようにもうまくいかない。意外な助けはその時やってきた。
「あら、先輩。」
急に声をかけられた。どこかの制服に身を包んだ少女、幼く見えるが中学生だろうか。とにかく知らない顔だ。その少女は戸惑う清水と水を差された条善寺の連中に構わず割って入る。
「ご無沙汰しております。」
清水は戸惑うが少女はさあさあとその背を押す。
「本当にお久しぶり、ここで立ち話もなんですから向こうへ参りましょう。」
幼い見た目の割に随分と丁寧な口調、ナンパしてきた野郎共が見えていないかのように振る舞っているが生憎そのままでは行かない。
「おーい、そこのロリちゃん。」
金髪刈り上げピアスの少年—主将の照島遊児—が言う。おそらく少女の幼い外見からそう呼んだのだろう。
「お兄ちゃん達さぁ、大事な話してんの。中学生は引っ込んでてくれる。」
少女は聞こえなかったふりをしてさあ行きましょうと清水の背を更に押す。とうとう清水は一瞬ぽかんとしていた野郎共の隙間から抜け出せた訳だが知らない少女は残されてしまった。
「先に行っててくださいな。」
躊躇う清水に少女は大きな声で言った。野郎共があっと声を上げた時にはもう遅い、やはり戸惑いながらも清水は走ってその場を去った。