第39章 ・牛島兄妹、留守番をする 終
「年齢はともかく進学させてからでないと文緒が気の毒だろう。」
「若利、お前も普通に返すなっ。」
「瀬見はさっきからどうした。」
「大体お前のせーだっつってんだろっ、何度も言わせんなっ。」
「何にせよそんだけ溺愛してるならとっとと既成事実にしたらどうかと思っただけです。」
「白布から見ても溺愛なのか。」
「違うつもりでしたか。」
「納得がいかない。」
若利が首を傾げる中、五色がうーんと唸りだした。
「また工は何唸ってんだよ。」
「エースになるにはやっぱり嫁も入用なんでしょうかっ。」
「前から思ってたけどお前馬鹿だろ。」
「何でっ。」
瀬見にバッサリと斬り捨てられて五色はゲーンッと衝撃を受ける。
「バレーとまっったく関係ない、それに文緒みたいな嫁がそうそういるか。」
「アハハ、そうだよねー。というか文緒ちゃんは大昔の奥様って感じだよね、今の世に合わないよね。」
「天童、それ以上はやめろよ。」
「何で英太君が怒んのさ。」
わかってるくせによと言いたげに睨む瀬見に天童はへらりと笑う。
「若利君にはピッタリだからいーじゃん。」
「獅音、後頼むわ。」
「丸投げか。」
「宴もたけなわですけど」
川西がボソッと呟いた。
「そろそろ行かないとヤバイかも。」
「ゲッ。」
山形が声を上げて野郎共はバタバタとやり出す。
「納得がいかないが認めざるを得ないのか。」
「若利もいい加減にしなさいよ。」
そんなこんなでその日の夜、牛島家の母と祖母は戻ってきた。兄妹は迎えに出て荷物の整理を手伝ったりしていたのだが文緒が引き取った洗濯物を持って行っている間に母が息子に自分達がいない間どうだったか尋ねる。
「やる事が多かったが悪くなかった。」
若利は思ったままを答えた。
「文緒がよくやったと思う。」
母はキョトンとした顔でそうと呟く。
「むしろ世話を焼かれた。」
言う息子に母は吹き出しそうになるのを堪えるが当の息子は気づいていない。
「後、文緒はもう少し自覚がいると思った。」
何のと聞く母に若利は微かにムスッとした顔をする。