第39章 ・牛島兄妹、留守番をする 終
「お前から言ってきたのは初めての気がする。」
「ああ、その、そうかもしれません。」
「安心した。」
「え。」
「その調子で自分から求めるようにしろ。バレーの事に不安はないがお前の事にはいささか不安がある。先にも言ったがまだお前には抱えたままいなくなりそうに感じる。」
柄にもなく語ってしまった若利に文緒は頷いてそれじゃあと頭を動かす。まるで自ら若利に顔を近づけようとする様子に若利が義妹の顔から手を離した途端、義妹の唇が自分のそれと重なった。文緒、と義妹の名を呼びかけたが義妹は繰り返し唇を重ねてしまいには若利の頬にまでやり始めた。文緒にしては大胆な事だ。驚いて若利は目を見開く。
「急にやるとは思わなかった。」
「早速自分から求めてみました。いつも兄様に与えられてばかりではいけないので。」
その言葉は若利に衝撃を与えた。
「文緒。」
「はい兄様。」
返事をする文緒に若利は上から覆いかぶさって抱きしめ直す。
「他の奴がお前に触れるのが余計に嫌になってきた。」
「何て事。」
「瀬見は除く、世話になっているからな。」
「間違っても必要以上に触れる方ではないと思いますが。」
「そこも踏まえている。」
「因みに兄様、他でもたまに頭を撫でられたり背中を叩かれたりする事がありますがどうしましょう。」
「誰だ。」
「天童さんがたまに背中をバシバシされます。川西さんにはごく稀にですが頭をポムポムされます。五色君には一度首根っこを掴まれましたがそれは階段から落ちそうになったからです。後は青城の岩泉さんに頭を撫でられました。」
若利は自然に眉根が寄っていた。