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【ハイキュー】ウシワカイモウト

第38章 ・牛島兄妹、留守番をする その6


実際は話がもっと進んでしまい文緒は自分のものだと主張したいという意図まで示されているがそれは流石に言えない。

「気が回る奴だったら逆に俺もびっくりだけどな。」
「岩泉さんにまで言われるなんてうちの兄様は一体。」
「バレーの事以外は超鈍感、他に何だよ。」
「何て事。しかも否定しづらいです。」
「おい、お前も何気に言ってんぞ。」

あらと文緒は呟いて首を傾げる。

「しょうがねー兄妹だな。」
「ただ岩泉さん、不思議なもので。」
「おう。」
「勝手に嫁呼ばわりされて以降、何だかクラスからの扱いが少し変わったんです。」
「もともとどういう状況だったんだ。」
「浮いてました。前の学校の頃から変わり者兼嫌われ者の立ち位置でしたが、白鳥沢に来てからも緩く避けられていて。兄のチームの人からは多分嫉妬もされてるって言われてたんです。」

さらりと重い事情を口にする様に岩泉が目を見開いていた事を文緒は知らない。

「クラスでわりとまともに話してくれるのはこれまた兄と同じチームの人だけだったんですが、最近クラスの女子の人が声をかけてくれるようになりました。」
「随分な変わりようじゃねぇか、何だそりゃ。」
「よくわかりません。嫌がらせをされている訳でもないですし。」
「妙な話もあったもんだな。」

当然岩泉は首を傾げ、白鳥沢の男子バレー部の面々は五色と若利以外何となく気づいていてしかしやはり当事者である文緒自身がわかっていないこの状況、まず先日文緒が五色とわいわいやっていた辺りからそれまで牛島文緒はお高く止まっていて絡みづらいと思っていた層が本格的に考えを改めた事、加えてあの牛島若利の嫁ポジションの奴に妙な事をしてはいけないという暗黙の了解があっという間に広まったという事がある。
つまり文緒は意図せず兄の威光に守られる形になったのだ。

「実害がねーならまあいいか。」
「私もその辺りはいいかなと思っています。」
「あっさりしてんな。」
「昔のことを思えば今は断然居心地がよいので。」
「何かあったんだろうが深く聞くのはやめとく。」
「お気遣いありがとうございます。」

ここで2人は一旦沈黙した。しばらくの間歩く音と買い物袋が擦れる音がだけが響く。やがて先に口を開いたのは岩泉だった。
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