第37章 ・牛島兄妹、留守番をする その5
「当然だ。何故聞いた。」
「私は自分から望む事に慣れていません。だから今度こそ望んでいいのかとつい聞きたくなります。」
「誰がお前にそれを強要したのかは知らないが」
若利は断言した。
「お前はもっと求めるという事をするべきだ。そうでなくては困る。」
「つまり」
「抱え込んだままいなくなられるのは良い気分ではない。」
「わかりました、兄様。」
「それでいい。」
そうして兄妹は広くて静かな家で2人、朝ご飯をもぐもぐしていた。
「だから朝もはよから文緒がお前にくっついてきたのか。」
昼休み、学校の食堂にて瀬見がやれやれといった調子で言った。
「ゴミ出しの日でもあったからついでだ。」
「それっぽいこと言って誤魔化そうなんてお前どこで覚えたんだよ。」
「何がだ。」
「マジで言いやがってこのヤロ。」
ヒクヒクする瀬見、山形がそれだけどよ、と口を挟む。
「うちのクラスでも若利と妹がとうとう朝っぱらからセットで来たってんで持ちきりだった。今度こそ嫁決定だって。」
「若利、お前なぁ。」
瀬見はとうとう呆れ顔である。
「ちったぁ文緒の立場も考えろよ。」
「大丈夫です瀬見さん、うちのクラスでも文緒は牛島さんの嫁で通るようになりました。」
「いや工、それ大丈夫って言わねーから。」
「でも文緒避けてた奴らがちょっと柔らかくなりましたよ。」
「何だよそれ。」
理屈に合わないと言った様子で今度は白布が言う。
「よくわかんないですけど、何かいじめちゃいけないみたいな空気になってます。」
「現金な奴らだ。」
白布はフンと鼻を鳴らし、川西がへーと呟く。
「まさかの牛島さん効果。」
「で、本当にいいのか若利、学校中に広まってるんだぞ。」
心配する大平に若利は問題ないと断言した。