第36章 ・牛島兄妹、留守番をする その4
「え、え。」
文緒からすれば混乱するしかなかっただろう、何故なら若利は文緒を抱き上げたからだ。他の少女達が羨ましがるであろうお姫様抱っこの体勢、しかし若利の認識は小さな子供を抱き上げているのと変わらない節がある。固まってしまった義妹を他所に若利はそのままベッドに向かい、まずは抱き上げていた相変わらず軽くて薄い体をベッドに放り込んだ。
「あの、兄様。」
「早く布団を被れ。」
戸惑いまくって起き上がろうとする義妹に若利は言った。
「ただでさえ少し冷やしてしまったのは迂闊だった。」
「そういう問題ですか。」
「そういう問題だ。」
まだ何か言いたそうにする文緒だが今回は言わせるつもりがない。チロリと見やると文緒は察したのかすぐゴソゴソと潜り込み目だけ布団から出す格好になる。やはり小動物に見えて仕方がないと思いながら若利は自分もその横に体を滑り込ませる。義妹の体温を初めて寝床の中で感じた。
「兄様、ええと。」
「まだ何かあるのか。」
「だって、その、お邪魔になってしまいます。」
「そう思うなら最初から部屋に帰している。」
「その、こんな事をして良いのでしょうか。」
「良くはないだろうな。」
若利は事実を言った。そこで普通に抜かす事が普通でないことは自覚無しである。
「ただ、母さん達はいない。最悪見つかった場合でも俺が責任を取る。」
「そんな、兄様。」
「俺が言った事にお前は従ったまでだ。返事は。」
「はい、兄様。」
「それでいい。」
言って若利は本能のままに義妹を抱き寄せた。やはり全体的に細い、薄い。だがそれ以上に愛らしいと思う。
「少しでも長く居たい、」
思わずそう呟いていた。
「お前が孤独を感じると言うなら。」
「兄様。」