第5章 ・五色工は認めてる
「親戚達は私をどうしようか凄く考えて話し合ってたみたいで、そしたら牛島さん所が私を引き受けるって話になったの。」
「そーなのか。」
思わずぶわっと涙が湧きそうになるのを五色は堪え、ごまかすかのように本当に聞きたかったことを口走った。
「そ、それより牛島さんって家でも練習してるのかどんな感じなんだいつもボール触ってる感じなのかどーなんだ。」
まくしたてる五色に文緒はついていけていない。勿論五色は気がつかない。
「私、その」
消え入りそうな文緒の声に五色はイラッときた。
「はっきり喋れよっ。」
思わず声を上げる五色、文緒がまたビクッとした。クラスの連中が送る非難がましい視線を感じて五色はうっと唸る。
「ごめんなさい。」
ひどくしょんぼりした顔で文緒は言い五色は更に心が痛む。
「いや、俺も、その、悪い。」
でもと五色は思う。
「お前、そんなんで牛島さんの妹出来んのかよ。」
「そんなの、わからない。」
自信なさそうな歯切れの悪さに五色はまたプチッときたが何か言う前に文緒は言った。
「来たばかりだからまだわからない。でも出来るようにはしたい、それじゃいけないの。」
逆に問われた。真っ直ぐ見つめる文緒の瞳に五色は一瞬ドキリとする。こいつ、と五色は思う。弱っちく見えるけど弱くない。
「私、バレーボールの事全然わからないの。だから兄様が家で練習してるの見てもそれが何なのかとかどの程度のことなのかとかなんて今は伝えられない。ごめんね。」
「だ、だったら」
五色は思わず文緒の机に両手をバーンッと置いた。クラスの連中が何やってんだ五色と見つめているがやはり構っていない。
「俺が教えてやるっ。」
「ありがとう。でもどうして。」
小首を傾げる文緒に五色は顔を真赤にして言った。
「そそその、牛島さんと一緒に暮らすならお前が困るだろと思って。」
とは言うものの実は五色本人が俺何言ってんだという状態である。
「五色君は親切だね。」
微笑む文緒に五色は頭が爆発した心持ちがした。