第4章 ・天童覚は知りたがる
「でも先日瀬見さんにも同じ事をお話したら諦めるのはまだ早いと仰(おっしゃ)っていただきました。ああ、天童さんくらい構わず喋るとよいと。」
「ちょっと、英太君は何を吹き込んでんのかな。ってか話戻って文緒ちゃんの趣味は。」
「趣味かはどうかわかりませんが」
うーんと顎に片手の人差し指をやる文緒は少女漫画のキャラみたいに見えると天童は思う。そして文緒は何故か辺りを見回してからスカートのポケットをゴソゴソした。何かと思ったらそこからはスマホのような端末が出てきた。しかし大きさから考えると電話としては随分薄い。
「それ何。」
「携帯型の映像機器です、亡くなった父からもらいました。映像機器といってもかなり高機能でタブレットの小さい版のようです。私は音楽とビデオと写真にばかり使っているのであまりわかりませんが。あ、家ではインターネットに繋がるのでたまにウェブサイトも見ます。」
「文緒ちゃんさ、ケータイは。」
「ガラケーです。」
「へぇ、めっずらしー。」
「友人がいなくて急ぎの通信も早々ないので。」
サラリと深刻な事を口にしながら文緒はその携帯型映像機器を操作し写真を呼び出して画面を天童に見せる。写っているのは小さな家具や食器を背景に写っている栗鼠の人形だ。人形は女の子と男の子の対になっている。
「こういうのが好きなの。」
天童は笑いをこらえるのに必死だ。なるほど文緒がキョロキョロした訳がわかった気がした。
「小さくて可愛い物につい釣られるたちなんです。栗鼠の人形は母がくれました。そのティーセットは所謂(いわゆる)食玩で、クッキーと椅子とテーブルは粘土で作りました。最近の100円ショップは便利ですね。」
「器用ナノネ。」
「いえどちらかといえば不器用だと思います。形がゆがんでますし。」
「まず作ろうって発想がねぇ。で、これ若利君は知らない訳だ。」
「話す機会がないのとまるっきり子供だと言われそうな気がして。」
「ナルホド。」
「内緒ですよとは申しませんが。」
「何で。」
「その、人の口に戸は立てられませんから。」
「ものは言いようダネ。」
とはいうものの天童はまったく気を悪くしていない。むしろますます面白いと思う。
「いいねぇ、何か楽しい。」
ニシシと天童が笑っていると休み時間終了のチャイムが鳴る。