第4章 ・天童覚は知りたがる
天童覚はぶっちゃけて言うと編入してきた牛島文緒に興味津々だった。何と言っても自分とこのエース牛島若利の義妹になったというなかなかの経歴である、直感的に面白そうだと思った天童はいいんだか悪いんだかその日の休み時間、通りがかった文緒をとっ捕まえた。
「あの。」
捕獲された文緒は戸惑っていた。
「天童覚、若利君と部活一緒。」
「ああ、瀬見さんがおっしゃってた。牛島文緒と申します、よろしくお願いします。」
「ちょっと、英太君がなんて。」
「賑やかな方がいると。」
「いやうん、流石うすーくとはいえ親戚なだけあるね。」
「よくわかりませんが。」
首を傾げる文緒はおそらく天童の脳裏にその義兄が浮かんでいる事など露知らずだろう。
「ま、それはいいけどさ。」
天童は持ち直した。
「君大変ダヨネー、あの若利君とひとつ屋根の下でしょ。疲れないの。」
文緒はまぁそれはと呟き視線を下に落とす。わかりやすい。
「そもそもまだ今の家に慣れてませんので。」
「若利の事はどーなの、好きなの。」
文緒はまた首を傾げる。
「どの種類の好きなのかがよくわかりませんが、少なくとも妹として出来ることはしたいと思っています。」
「なったばかりなのに。」
「難しい事はよくわかりませんが、初めて会った時から何となくそう感じたもので。」
「ふーん。」
少し頬が赤い文緒に天童はついニヤニヤした。若利君てば流石だねぇと思う。
「あ、ところで文緒ちゃんてさ、趣味とかあんの。」
「何故お尋ねに。」
「知りたいからっ。てか何で聞き返すのさ。」
「まさか兄より前に天童さんから聞かれるとは思いませんでしたので。」
これには流石の天童も固まった。なるほど英太君が若利はダメだって言うわけだと思う。
「若利君は文緒ちゃんに何も聞かないの。」
文緒はしょんぼりした顔ではい、と頷く。
「いらぬことを詮索されないのは良いのですが私から話しかけても会話が続かなくて兄様からは最低限の用事以外何も。」
「兄様って呼んでんだ。」
「何となくそういうイメージがついてしまったんです。」
「わかる気はするケドネ。」