第25章 ・【外伝】 3番と5番のとある会話
「天童がそんな面してちゃどーにもなんねーよ。」
「んで結局話戻すけどどうすんの。このまま黙ってるの、それともとっとと言っちゃうの。つか言えよ。」
「速攻結論出しやがってこのやろ。」
「英太君がバレー以外で迷ったまんまだとこっちだってどーにもなんなくなっちゃうからねぇ。」
へらっとしつつも天童は重いことを言う。
「本当は言いたいんだけど言ったら大体どうなるか見当つくから困ってる。」
瀬見は正直に言った。この際だ見ているのは天童だけ、みっともなくても全部言っちまえと思った。
「どうなりそうなの。」
「文緒の事だからめっちゃくちゃ困ると思う。そんでどうしたらいいかわかんなくなってこっそり泣くと思う。」
「あー、何か想像ついた。」
「話聞いてる限りあいつは誰かからそういう好意を向けられた事がない。だからどこまでどうしたらいいのかわかんねーだろうしそういう事を相談出来る相手もいない。」
「オッケー、とっとと言っちゃえ。」
「お前すげーな。」
あっさりどころかばっさり言い切った天童に瀬見は苦笑した。
「文緒ちゃんには悪いけど、こっちは英太君の事情を優先したいね。」
「サンキュー、天童。」
瀬見はふ、と笑い、額をロッカーから離した。くっつけた過ぎたせいで少し痛い。
「俺はべっつにー。」
おどけた顔をして天童は言った。
「チームの為に優先すべき事を優先しただけだよん。」
「ありがてぇわ、ホントに。」
瀬見は呟いた。
「でも重ねてごめん英太君、正直そこまでハマるって思わなかったよ俺。」
「まぁ俺も当初は若利があんまりにもアレだから見かねたってだけなんだけど。」
目を閉じる瀬見、瞼の裏には中庭で話した時の牛島文緒の姿が浮かんでいる。