第22章 ・キャラメル
勝手に盛り上がる野郎共、しかし若利は特に突っ込まない。よくわからないが皆が文緒の成長を喜んでいるととっている。横で見ていた大平がやれやれと首を振った。
「盛り上がってるとこ悪いけどお前らいい加減着替え終われよ。」
「へいへい、獅音はとーちゃんかよ。」
「むしろかーちゃんかもな。」
「隼人まで乗らないで。」
「嫁とは。」
「若利もそこは考えこまない。」
これだけ自分らの主将を弄っておいてこいつらが練習に遅刻しなかったのは奇跡と言えるかもしれない。
そうしてその日の昼休み、牛島文緒が弁当を持っていつものように中庭へ向かおうとしていた時である。
「あ。」
廊下ですれ違った川西が声を上げた。
「川西さん、こんにちは。」
「ちょうどいいや、そっちの教室に行こうとしてたんだけど。」
「五色君ならお弁当食べてるとこだと思います。」
「いや、お前に用事。」
「あら、何でしょう。」
文緒が首を傾げていると川西は制服のポケットをゴソゴソやりだす。
「やる。」
文緒の目の前に突き出されたのはキャラメルの箱である。
「えと。」
「やる。」
「あ、ありがとうございます。でもどうして。」
自分の誕生日でもないし川西とは瀬見ほど喋ってはいない。文緒はキョトンとする他なかった。
「自力で牛島さんの過保護撤回させたって聞いたから。」
「もしかしなくても。」
「牛島さんが朝っぱらからバラしてた。」
「兄様は一体何を。」
「で、頑張ったみたいだから皆でご褒美あげようって話に。」
「よくわかりませんがご好意として頂きます。ただ少し気になるのですが」
「何が。」
「兄様もですが皆さん私を小さい子供と思っておられませんか。」
「えっ。」
「えっとは。」
「悪い、少なくとも俺は似たようなもんだと思ってた。」
「ああ、何て事。」
文緒は頭を抱えた。
「大体キャラメルでもやれっつったの白布だし。」
「白布さんは何か私に恨みでも。」
「恨みじゃないけど牛島さんとお前の話になると結論がすぐ出ないからイジイジするらしい。」
もはや文緒としては何が何だかわからない。もしかして、と思う。白布は置いておいても自分達兄妹はバレー部内で面白がられているのか。