第22章 ・キャラメル
若利は次の日、朝練開始前に昨日の事をチームの連中に話した。別に報告義務などないはずだが文緒が妹になってからチームの連中が兄妹の事を気にかけていた為に習慣化している。
「という訳で無理に連絡を入れさせるのはやめた。」
若利が話し終えた瞬間、何いいいっとチームの野郎共は声を上げた。白布だけは声を上げない、しかし目を見開いている。
「おぉしっ、文緒よくやったっ。」
ガッツポーズをする瀬見に天童が突っ込む。
「英太君いつの間に名前呼びになったの。」
「他に呼びようがないじゃん。」
「あっやしーなぁ。」
「お前のジャンプ破ってやろうか。」
「英太君は最近脅迫が趣味なの。」
「にしても天然お嬢様が思い切りましたねえ。」
川西がしみじみと呟く。
「何かご褒美あげないと。」
「太一がそんなこと言い出すなんて世も末だな。」
呆れたように言う白布に川西はいいじゃんと返す。
「なかなか牛島さんに自分の意志言わない奴が奮闘したみたいだし。」
「お前関係ないだろ。」
「見てて面白い。」
「馬鹿だろ。」
冷めた目をする白布に対し、天童がノリノリである。
「やーめでたいねぇ、ここは赤飯かなっ。」
「あのね天童、文緒さんは嫁入りしたとかじゃないんだから。」
「えー、似たようなもんじゃん。」
「文緒はまだ15だ。」
「若利もね、突っ込むとこはそっちじゃない。」
「そうなのか。」
「いつか文緒を嫁にするんですか、牛島さんっ。」
「あれは妹だが。」
「工っ、お前はちっと黙れっ。」
「何すんですか瀬見さんっ、むぐっ。」
何も考えていない五色を押さえながら瀬見が言う。
「まあそれはともかくよっぽど妙なもん除いて文緒は何やっても多分喜ぶぞ。」
「ホント把握してんな、お前。」
「ごちゃごちゃ考えはするけど根は単純だからな、あいつ。すぐわかる。」
「若利とどっちが兄貴なんだか。」
「隼人君、それは言わないお約束だよ。で、どうしよっかー。」
「俺こないだ飴やったら普通に喜んでたけどな。」
「もうキャラメルでもくれてやったらどうです。」
「賢二郎、ナイスっ。」
「こんなので天童さんに褒められても。」
「そういや購買に売ってたような。」
「じゃあ太一、お前買ってこいよ。」
「そうする。」
「乗るな、一言くらい突っ込め。」