第22章 ・キャラメル
「それで今気づいたのですが」
「どうした。」
「何故川西さんがいらっしゃったのですか。」
「言い出しっぺの法則。」
「言い出したのですか、そして乗られたのですか。」
「俺、お前もっと牛島さんにはっきり言いたいこと言やいいのにって思ってたとこだから。」
「それはお気遣いありがとうございます。」
「いいって。頑張れよ。」
よくわからないものの取り急ぎ文緒はキャラメルを受け取って礼を言った。
しかし流石の文緒も突っ込みどころに気づかなかったわけではない。その夜のことである。
「おかえりなさい、兄様。」
「ただいま。」
「早速で申し訳ありませんが兄様、朝からチームの方に一体何のお話をされてたんです。」
「身に覚えがない。」
「川西さんからいきなりキャラメルを頂いてしまいました。」
「昨日の話をした事か。」
「何故にお話になったんですっ。」
「皆がお前の事を気にかけているようだから言った方がいいと思った。」
文緒はああ、とため息をつく。
「兄様、もう少し私への影響をお考えください。」
「不都合があるのか。」
「五色君にホントにもらったんだと笑われました。クラスの皆も私を悪い事はしないけど何かとネタになるタイプと思い始めているようです。いいのか悪いのか少し皆との距離が縮んだ気もしますが。」
「ならば問題があるようには思えん。」
「どうしよう、この人。」
文緒は突っ込みを入れるのは苦手だけどこれからもっと頑張らないといけないのかなと思案した。
ちなみに貰ったキャラメルは3日程文緒の鞄に入っていて、文緒の下校時のおやつとして活躍した。空き箱は改造されて文緒の部屋にある人形のベッドになった。
次章へ続く