第2章 新生活
「月島ー、あんまりマネージャーいじめるなよ。」
今しがた体育館に入ってきた大地さんが月島くんに一言注意してくれた。
「だって、からかうの面白いんですもん。」
にやにやしながら月島君は私から離れて、行ってしまった。
かわりに大地さんがこちらにやってきて声をかけてくれた。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。助かりました……。」
「月島はさ、気に入ってる子ほどいじめたくなるタイプなんだろうな。」
「気に入ってる…?」
大地さんの言葉に首を傾げる。
「そ、お前のことだよ。昨日のこともあったし影山くんに嫉妬しちゃってるんじゃないの?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて大地さんが言う。
「いやいやいや、ないです。それはないですよ。月島くんに聞かれたら大変ですよ!」
「そうだな、10倍どころか100倍にして返されそうだ。」
そう言って笑ったあとで、ところでさ、と大地さんが再び口を開く。
今度は、声のトーンを幾分落として。
私にしか聞こえないように。
「昨日は誤解ってことで片がついたけど、本当に影山とそういうことはないんだよな?」
「だ、大地さんまで…」
「ははっ、悪い悪い。お前ら仲良いからさ。秘密で付き合ったりしてるのかと思って。」
お前ら、仲良い。
それ、今朝、菅原先輩にも言われたな。
「まあ、恋愛は自由だから好きにやってくれて構わないけど、部活に支障を来さない範囲でよろしく!」
「はあ……」
それだけ言うと大地さんは皆に集合をかけた。
その日の練習で、来たるゴールデンウィークに合宿を行い、他校と練習試合をすることが決まったとの報告があった。
合宿と練習試合。
ゴールデンウィークが無為に終わっていくことはこれでなくなったので良かったなと思う。
余計なことは考えずに、マネージャーとしての仕事に集中しなければ。
そう、決意を新たにした。