第15章 月島くん。
自分の気持ちを素直にひとつずつ彼に届けていこうとしていたら、目の前の彼は私から視線を外してしまう。
その頬が、少しだけ赤く染まったように私には見えた。
でもそれは一瞬で。
彼はすぐに私に視線を戻し、いつものあの嫌な笑みを浮かべた。
「ふーん………。」
「な、なに……?」
「菜月さ。」
そして私の耳元で囁く。
「そんなに僕のこと、好きなんだ。」
一気に体温が上がったようだった。
飛び退こうとしたけど、月島くんに腕を引っ張られて止められる。
「……濡れるから。」
「あ、ありがとう………」
さっき気付いたばかりなのに、思わず伝えてしまった自分の気持ち。
どんな言葉が返ってくるのか怖くて、私は俯いた。
「あのさ。」
降ってくる彼の呼びかけに、恐る恐る顔を上げた。
そこには、私が夢にまで見た純粋な笑顔を浮かべる月島くんがいた。
「…………!!」
驚いてその笑顔に釘付けになるも、次に彼の口から発せられた一言に私は愕然としてしまう。