第14章 大地さん。
そこから、大地さんに伝えたい言葉を探す日々が続いた。
今までありがとうございました。
向こうに行っても頑張ってください。
お元気で。
色紙に書くのに無難な言葉はいくつも浮かぶのに、それを書いてしまったらもう二度と彼には会えないような気がしてきて、その度に胸が痛んだ。
その痛みに、私は気付く。
大地さんと、これっきりになんてなりたくない。
東京は、私にとって遠い場所だ。
でも、そんな遠い場所へこれから一人で赴いて新しい生活を始める大地さんのことを、私は遠くからでも支えたい。
きっとキャプテンでなくなっても彼は極力、特別な人以外には弱みを見せることなく生きていくんだろう。
私はそんな、彼が心を許せる相手になりたかった。
そして、頻繁に会えなくても。
声しか届けられないとしても。
彼と繋がっていたかった。
今まで散々一緒にいたのに、最後の最後になって気付くなんて。
そう考えだすと感情が溢れだしてきて、引退試合の日まで、枕を濡らす夜が続いた。