第10章 「春」
代表決定後も、段々と寒さを増す中、厳しい練習は続けられた。
すべては1月、東京の舞台で頂点にのぼりつめるため。
クリスマス一色で浮かれ気分の街中とは打って変わって、皆は真剣そのものだった。
今年はクリスマスなんて関係ない。
そう思っていたけど、いざその日を迎えてみると全く何もないというのも寂しい気がしてきてしまう。
ちょうど終業式で最後に会った友人たちはパーティをすると言っていたし、彼氏とデートの子もいた。
クリスマスイブの今日、うちは両親ともに仕事で遅くなるということだったので、家でのごちそうもケーキも望めない。
帰りにコンビニでケーキでも買って帰ろうかな。
わびしいな………
そんなことを考えながら、今日も菅原先輩と帰り道をたどっていた。
それにしても今日は、一段と冷える。
雪でも降ってきてしまうんじゃないかと思うほどだった。
「菜月?」
「あ、はい。」
「どうした?ぼーっとして。」
「いや、なんかここ何日かの間でも一番寒いなあって思って…」
それを聞くと先輩は、なー!と言って同調してくれた。
「今年の冬、マジで寒いらしいもんな。」
「うー、やだなあ……」
心底そう思いながら、白い息を吐き出す。