第9章 代表決定戦
「大地さん。」
「……ん?」
「ここには、大地さんが背中を見せなきゃならない部員はいないです。」
「…………菜月」
「だから、無理して笑わないで下さい。」
大地さんは、しばらく私の顔を見つめたまま呆然としていたけど、視線を床に戻したあと、静かに呟いた。
「ああ……。サンキュ。」
先程までは、どうしても元気付けなければ、と躍起になっていた。
でも、よく考えたらそうやって私が気を遣えば遣うほど、大地さんにとっては負担になるのかもしれない。
それなら、彼がさっきのように無理矢理笑顔を作ったり、空元気を出さなくても良い空気を作ってあげることのほうが重要なんじゃないか。
私だけは、キャプテンじゃない彼も受け入れてあげなければ。
無理に作った笑顔なんていらない。
大丈夫って言ってくれなくても良い。
たまには弱音、吐いてほしい。
無表情で呆然とする彼の背中を擦り続けながら、私は一人、そう思うのだった。