第7章 東京遠征
「菜月。」
「?」
「この間は………ありがと。」
「この間?」
「木兎さんのことだよ。」
そう言われて思い当たった。
他の人の練習へのスタンスを聞いてみようと提案した件のことか。
「木兎さんの話聞いてから、少し考えが変わった。僕にも“バレーにハマる瞬間”てのが来るのかは分からないけど、探してみたいと思うようになった。…だから、そのお礼。」
少し照れた感じでボソボソと話す月島くんを見て、私は嬉しくなった。
やっぱり、影響を与え合って少しずつでも人は変わっていく。
事実、この一週間で月島くんの考え方は今後の烏野を左右するかもしれないレベルにまで変わっていた。
月島くんが本気になれば、烏野は更にその力を増すだろう。
「バレーにハマる瞬間ってやつ、見つけられるといいね!」
そう笑顔を向けると、月島くんは控えめに頷いた。
その落ち着いた、でも静かな闘志をたたえたその瞳は、この前冷静さを欠いて自分の葛藤をぶつけてきた人と同一人物には思えない。
そんな頼もしい月島くんの様子を見て、私は喜びからまた笑顔をこぼす。
考え方が変わったことによってお兄さんとの関係も改善すればいいな。
余計なことかもしれないけど、私はそんなことを考えるのだった。