第6章 再起
「…それでいいんだよ。」
「え?」
「意識しろよ。俺のことだけ考えろ!」
その言葉のすぐ後、右手が影山くんに奪われた。
「え、やだ、恥ずかしい…」
体の中心が、火がついたように熱くなる。
心臓がぎゅっと握られたように苦しい。
「…着くまで絶対ェ離してやんねえ。ずっと恥ずかしがってろ。」
そう言って影山くんは私の手を引いて歩き出す。
思いきり引っ張られることを覚悟したけど、その足取りはとても穏やかで、珍しく歩幅を合わせようとしてくれている気配を感じた。
一瞬、影山くんが彼氏になったかのような錯覚を起こす。
先程まで感じていた空腹なんて完全にどこかへ行ってしまい、私の思考は繋がれた手にのみ集中するのだった。