第5章 IH予選
「烏野おおおお!ファイ、オー!!!」
2回戦が始まる前のアップでの球出しが始まる。
私は声を出すことしかできないけど。
でも、烏野の一員としてできることを頑張るんだ。
伊達工業の応援団に張り合うがごとく、大きな声を出しながら球出しの手伝いをする。
「なんか菜月、影山みたいな顔してる…どうかした?」
「え?!」
自分の番のレシーブを終えた日向くんにそう言われて、驚いた。
影山くんみたいな顔って…
「私そんなに怖い顔してた?」
「うん、こーんな顔してあっちのコート睨んでたぞ。」
そう言って日向くんは影山くんの顔真似をする。
それが何だかすごく似ていて、思わず笑ってしまった。
「おい、誰の顔が怖いって?」
「うわああ!」
「お前のことに決まってんじゃん。いっつも仏頂面してさ。」
「うるせえな!もともとこういう顔なんだ!」
尚も騒ぐ日向くんを追い払ってから影山くんは呟いた。
「…いい顔するようになったじゃねえか。」
「え?」
「お前も、俺達と一緒に戦ってるってことだよな。」
気合入れすぎて試合前に声枯らすなよ。
そう言って影山くんはアップに戻っていく。
私は今の影山くんの言葉が嬉しくて、ますます張り切ってしまう。
心の中でだけでも、頑張って、じゃなくて、頑張ろうって言いたいから。