第4章 変化
「全然開けに来てくれないね…。」
「くだらねえことするやつもいるもんだよな。」
影山くんは、もっと怒るかと思っていたけど、さほどでもなかった。
この狭い空間で矛先を向けられるのは勘弁だったので、意外だけれど助かった。
「お前って…モテるよな。」
いきなり影山くんの口から出た言葉に驚く。
「え?!」
「この前のストーカーもそうだけどよ、うちの部のやつらも…」
「そ、そんな別に…告白されたわけでもあるまいし……あ。」
思わず滑り出た言葉の間違いに気付く。
その様子に反応した影山くんがマットに寝転んでいた体を起こす。
「菅原さんに告白されたか。」
「あ…ええと…」
「………なんて返事したんだよ。」
「…私、まだ好きとかそういうのがよく分からないからって。そしたら先輩、待ってるって言ってくれた。」
「そうか……。」
その後、少しの沈黙が続いた。
私は何を話したらいいのか分からず、目の前の跳び箱の段数の数字を見つめていた。
すると突然、マットについていた手に心地良い感触がふってきた。
影山くんが私との距離を詰めて、手を重ねてきたのだ。
「えっ…」
思わずマットについていた手を離すも、影山くんは逆にぎゅっと握ってきて離さない。
閉鎖空間でふたりきり。
そして密着。
この状況が私をどうしようもなく緊張させていた。