第4章 ザ・デート
とりあえず移動しながら、多香子は笑って言った。
「予定より30分以上早く着いちゃって…。どうしよっかなぁって思って適当にお店見てたら、見覚えある猫背の人がもそもそ歩いてくるのが見えて♪」
「なんで声かけてくれなかったのッ?」
「だって~…。なんか、カタい顔してたし。ちょっと遠目で見守ってた(笑)」
うーわ。聞いた?ヒデー彼女だなッ!
「メイキング見たような気分だったかも。なんかソワソワしててさ…ふふふっ」
「俺チョー恥ずかしんだけどっ」
「ふふ。楽しみに待っててくれたんだなーって思ったら、嬉しくて♪」
「なら、さっさと声かけてよっ」
「だって~。もっと見てたくなったんだも~ん♪」
「悪趣味だよっ!?」
「ゴメンゴメン。…フフ。でも、ありがとね?」
「…なにが?」
「心配してくれてたでしょ。時間過ぎてもあっちから出てこなかったから」
「…」
それも見てたのね。俺、結構挙動不審だった?もしかして。何度も時計見て、改札見て、携帯見て…。
でもマジで、心配したんだからねっ?
「ゴメンってば。お詫びにお昼は私がご馳走するから。ね?」
「…」
「智く~ん?機嫌直してよ~」
直ってるよ。顔見た瞬間から。ていうか、別に機嫌悪くなってないし。シカメてはいるけど、俺、中身ちょールンルンしてるもん(笑)。
「ね、なに食べたい?もうね、何でもいいよ。智くんの好きなの!」
俺の、好きなの…?
「…ホントに何でもいいの?」
「いいよ♪」
「じゃあ、ねぇ…」
「うん。なぁに?」
「…」
多香子。
俺、今すぐ多香子を食べたい。
…なぁ~んて、ね。さすがにそれは言えない。この上そんな恥ずかしいこと、絶対無理!
「?何がいいの?」
「じゃー博多の美味しいお店で、とんこつラーメン♪」
「…」
「…」
「いいけど。じゃ、このまま一緒にとんぼ返り?」
「冗談デス!」
「ふふ。じゃあ…今日はエスコート、よろしく!」
「任せて~♪」
そう
今日はオイラの地元でデートなんです。ずっと案内するって言ってたのに、多香子が東京にいる間には実現できなかったから、じゃあ、って。