第5章 戦いの舞台へ
「ボート、か…」
ボート。うん。ボート、ね。すげー乗ってるよね、俺。釣り行ってるから。って、あれは船だけど。
いや、ボートはいいの。ボート乗るのも、別に。
でも、さ
ホラ、ここのボートは…ね?ちょっとホラ、あんまよろしくない噂っていうか…。ねえ?ま、あくまで噂なんだろうけど…。
「ボート…ねぇ…」
「ねっ!行こ行こ♪ほらっ」
「あっ。ちょっ、待って!」
目がキラキラしてる彼女。『疲れたァ~』とか言ってたの誰?ってくらい、ウキウキ浮き足立ってる。
…うん。ダメだわ。もう止めらんない、コレ。こーなったらアウトです。
「まぁ、いっか…」
「え?どうかした?」
「ん。なんでもない」
「ねっ。私、あのアヒルのがいい♪」
「…アヒル」
アヒル
…や、白鳥じゃない?アレ。たぶん…。
「やーんっ。あのアヒル、くちばしのフォルム最っ高♪」
「…」
まあ、どっちでもいいけど(笑)。
「ね、早く乗ろ!空いてるよ?早く早くっ」
「多香子、歩くの早いよ~」
「智くんが遅いのッ!」
湖に浮かぶボートには、子連れや友達同士で乗ってる人たちが数組。とくに寂れてるって訳でもない。
でも
「…」
ここのボートにはジンクスがある。“カップルが乗ると必ず別れる”って。母ちゃんも別れたって。信じてるわけじゃないけど、そういうのって、何かはあると思う。昔、何かがあった…的な?わかんないけど。
まぁでも…
いっか!
「俺らが壊せばいいんだしねっ」
そうだよ。だって別に、全部が全部別れるってわけじゃないでしょ?それに、そんなの関係なしに別れる人は別れるし、続く人は続く。
そういうもんじゃない?
「うん?なになに?」
「なーんでもない」
「へんな智くん」
「あ、足元気をつけてよっ」
「わっ。危なっ」
「狭いから。ちゃんと座って」
「は~い♪」
足で漕ぎながら、湖上の散歩へ、いざっ!
「「レッツゴ~♪」」