第8章 秀吉さんの微笑み
まっすぐ政宗さんが見れなくて視線が右に左にと動いてしまう。
「お前……可愛いな」
「ひっ……!」
今までに聞いた事のないような甘い声音に背筋がピンっと伸びてしまう。
そんな私を見て懸命に笑いを噛み殺している政宗さんを見て、すぐにわかった。
私、からかわれている……!
「もう!離して下さいよ」
「政宗__」
「へ?」
覗くように下から私を見上げる政宗さんの瞳が、私を捉えて離してくれない。
まるで好きな人でも見つめているかのように熱を帯びていて___
「政宗さんじゃなくて、政宗って呼べよ」
「え……?」
「さん付けなんて堅苦しくて肩が凝るんだよ」
あ……
そういう事ね。
私の事が好きとかじゃなくて、ただ単にさん付けが好きじゃないって事か
(ちょっと勘違いしちゃったじゃないのよ)
「さん付けをやめたら離してくれますか?」
「ああ」
「んっと……では、政宗……
(恥ずかしいな)
離して下さい」
「(顔を真っ赤にしながら名前呼びされるのも新鮮で面白いな)
駄目だ……」
「ちょっ!!」
首に回されてた手は私の腰を引き寄せ、抱きすくめられてしまった。
視線を上げると
「お前らいい加減にしろよ」
誰が見ても怒っているような秀吉さんが、腕組みをしたまま見下ろしていた。
秀吉さん……こわいよ