第1章 入れ替わるメイドの事情
「こちらが今日からあなたが使えるご主人様よ」
教育係の梅子さんに連れられて、ご主人様に紹介される
「東 樹里奈です。よろしくお願いします」
ぺこりと私はご主人様に頭を下げる
ご主人様はさして興味もなさそうにチラリとこちらをみるとやりかけの仕事に戻ってしまった
「梅さん、ご苦労様、後は私が・・・」
「はい、では黒刃様、よろしくお願いします」
梅子は同じ部屋にいた執事に私を任せ部屋を出る
「東 樹里奈さん?」
「は、はいっ」
「こうゆう仕事は初めてですか?」
「は、はい、そうです」
「わかりました。梅さんからこのお屋敷での仕事は聞いていると思いますのでそちらは省略させていただきます。
私からは契約の話です」
「契約、ですか?」
「そうです。あなたは3週間試用期間で働いていただきます。
3週間後、まだあなたがこちらで働きたいとお思いならば、それから一週間以内に本契約をしてください。
もちろん、住み込みの食事つきです」
「は、はい・・」
「それからこの屋敷には暗黙のルールがあります。
それを踏まえた上で契約を継続されるか考えた方がいいでしょう」
「はい・・・」
「なにか質問はありますか?」
「あ、あの・・・暗黙のルール・・て?」
「・・・それは3週間後におわかりになります」
「はぁ」
「ちなみに本契約をしたメイドは今のところいません。
一応、お伝えしておきます」
「・・・」
「理人様、他に何かございますか?」
「いや、別にない」
「では仕事に戻っていただいて結構ですよ」
執事の黒刃が笑顔で送り出す
「・・失礼します・・」
「おい」
ドアを開けたところで理人が声をかける
「は、はい?」
「・・・せいぜい頑張れ」
ふっ・・・と意味深な笑顔でそう言うとまた机に視線を戻した
私は頭を下げて部屋を出た