第15章 end1 鮮やかな花
__2年後
ガヤガヤと周りの人混みが音を立てる
賑やかな声は音楽になっていた
久しぶりじゃないかな、夏祭りは
スケジュール通りだともうすぐだ
「……あなた、もうすぐね」
「はなび!はなび!」
二年前は考えられなかったのになあ
誰かを愛することも
……幸せな家庭を築くことも
二年前、兄弟皆で絶望しきった
何日も何日も泣いていた
後悔だって何度もした
あの日がとても……懐かしく昨日のように感じる
ただずっとそれじゃあ何も変わらないから
数日後すぐさま皆で就職活動して……
必死に働いて助け合っていたっけ
今では兄弟皆で住んでいたあの家はもうない
ただちゃんと母さん達には何かしたくて……
母さんと父さんには新しい家を兄弟皆で贈った
……とても喜んでくれてたっけ
「あなた?聞いてる?」
あぁ聞いてるよ
「じゃあなんでずっと下を向いてるの?」
……夏祭りは苦手なんだ
「……どうして?」
それは__……
ドンッ
花火の音で声がかき消される
妻もつまらない会話よりも目の前の光景に
目を奪われる
妻の声が心に響く
娘の声が鼓動をはやくさせる
「あなた、みて!
とても綺麗よ!……とっても!」
いつにもなくはしゃぐ妻の声に
そんなにかと目線を上に向けた
……綺麗な紅色の花火が空を染めた
おカチ一十ト「「「「「「あ……」」」」」」
僕が、俺が、夏祭りが……
__花火が苦手な理由、それは
おカチ一十ト「「「「「「雪___……」」」」」」
夏だというのに雪を思い出すからだ
「……あなた?雪って……どうみても紅色よ」
クスクスと妻は笑う
ごめんね、今だけは昔の
……大切な人のことを思うことを許して
「……そんなに泣けてしまうの?
そんなにその方は……素敵だったのね」
正直とても。
でもそんな女々しい僕を、俺を
受け入れてくれる人だって大切だ
妻は気を使って黙ってまた花火に目を移した
__雪
たとえどれだけ今が幸せだとしても
どれだけ記憶に残るものだとしても
おカチ一十ト「「「「「「君を忘れない」」」」」」
ありがとう
どこかでそんな声が聞こえた気がした
end1 【鮮やかな花】