第19章 力
怜は降下していた。
雨で重くなった上着を見て、着てこなくても良かったかも。なんて呑気に思っていた。
キャスケットが飛ばないように抑え、猿比古にもらった眼帯が外れていないか確認する。
髪色で猿比古にはバレてしまう。いずれにせよ猿比古にはバレるだろうというのは予測済み。しかし、だからといって本当の姿を晒すにはまだ早い。
地面が見えて来たところで気付く。
スタジアムで戦っているのは青の王と黒い少年。
一方的な戦いに見える。
スタンッと二人の傍に着地する。
怜「こういうの、弱いものいじめって言うんじゃない?」
突如空から降りて来た少女。
「こういうの、弱いものいじめって言うんじゃない?」
帽子で素顔の見えない少女。
宗像「・・・どちら様でしょう?」
クロ「貴様・・・!」
宗像「・・・なるほど。黒狗のお知り合いでしたか。彼を助けに?」
「残念ハズレ。」
ダッとこちらに向かってくる少女。
交戦するために黒狗から足をどける。
少女は何のためらいもなく足を振り上げる。
宗像「女性らしさに欠けますよ!」
宗像は鞘で受け止める。
くるりと宙返りして着地すると、黒狗を抱え上げる。
クロ「なっ!」
「静かにしてて。」
宗像「逃がすとお思いで?」
「逃がしてもらうんじゃなく、逃げるの。」
くるりと後ろを向けば、スタンドにはシロがいた。
クロ「何故戻って来た!!」
シロ「えーと・・やっぱり、友達置いていくのはよくないかなぁって。」
宗像「・・・なるほど。友達と仲良く心中しようって事ですか。」
シロ「・・クロ、ごめん!今までウソついてました!」
クロ「・・・?」
シロ「実は僕・・・こういう者です!」
ふわりとシロの上に登っていく剣。
正真正銘のダモクレスの剣である。
全員がその剣に目を奪われていたせいで、誰も気づかなかった。
怜がにやりと笑っていた事に。