第17章 寒い
猿比古から連絡が入った。
しばらく会えない。
あと、危険だから出掛けるな。
怜は御柱タワーにいた。
自分のベットを見やると、まだ目を覚まさない十束多々良。
アンナに今日行けなくなった事を伝えたいが、残念ながら夜から繋がらない。
怜、出ちゃダメ。
そう夜中に一方的なものがあって以来、アンナに届かない。
誰が吠舞羅の幹部である十束多々良を撃ったのか。知りたいけれど、カメラも端末もあの場所に忘れてしまった。あの辺りには監視カメラもなかったはず。
本人が起きないことには何もわからないのだ。
自室を出て、怜は石版の部屋に来た。
そこにいつもいるのは、御前。
怜「・・・御前、あのね。昨日手が突然光ったの。」
御前はこちらを振り向きもしないで静かに聞いている。
怜「十束多々良を死なせたくなくて、でもどうしようもなくて、生きて欲しいって願ったら、手が光って、怪我がなくなってた。」
ペタリと地面に座り込んだ怜。
怜「御前・・・私って何なの!?」
ポタポタと床に落ちる雫。
自分が普通でないのは知っていた。けど、他のストレインと扱いが違うから、普通のストレインでない事も知っていた。今まではそんな事を気にもしなかったが、自分が怖くなった。
こちらを向いた國常路大覚。
大覚「・・・知りたいか。」
怜はパッと顔を上げる。
大覚「知れば、もう元には戻れんぞ。」
怜「最大の罪は無知であることだと思う。」