第29章 崩壊
多々良「仁多・・・。」
仁多「ずっと、白黒の世界で独りで歩いてきた。だからだろうな・・・。今お前がここにいるのに、まだ白黒のまんまだ。」
仁多は自身の左手に電気を纏わせる。
仁多「多々良には緑に見えてるであろうこの電気も、俺にはただの黒い弾ける何かにしか見えない。・・・自分の腕だって、ただの灰色の塊だ。」
多々良「・・・!」
仁多「・・・行けよ。女王の元に。」
多々良「・・・な、に、言って・・。」
仁多「流が暴れ出す前に。多々良はクランズマンとしての仕事をしろ。」
多々良「・・・仁多は、どうするつもりなの・・。」
仁多「・・・さぁな・・。どこにでも行ってどうとでもする。」
多々良「・・・嫌だ。」
仁多「嫌だって、お前なぁ・・・。」
多々良「やっと会えたんだよ・・・?俺は、仁多とも、怜とも、皆ともいたい。どこかに行くなんて、言わないで。」
仁多「・・・随分我が儘な子になったな?多々良。」
多々良「俺はワガママだよ。誰も傷ついてほしくないと思ってるし、戦いなんてなくなればいいと思ってる。俺の知ってる皆が幸せに暮らせればいいとも思ってる。」
仁多「じゃあ、いいじゃん。俺の事は忘れて皆で笑って暮らせばさ。」
多々良「仁多も入ってる。仁多は、俺の唯一の肉親だし、一緒にいたい。」
いつの間にかポロポロと多々良の目からは涙がこぼれ落ちていた。
それを拭おうと仁多が上半身を起こせば、多々良は仁多に抱き付いた。
多々良「俺の事は忘れて、なんて言わないでよ・・・!!」
ブワリと、世界が変わった。
緑の床、青い壁。白い雲。
仁多「・・・ぇ・・。」
仁多は自分に抱き付いている多々良を引っぺがして見る。
多々良「・・・?仁多・・?」
金髪の綺麗な髪。白い肌。ポロポロと透明な涙を零す弟。
色が、ついた。
仁多「・・・色、が・・。」
仁多の目から涙が溢れだす。
多々良「仁多?どうしたの??仁多?」
心配そうにこちらを見ている多々良。色のある、多々良の表情。
仁多「・・・綺麗な、色・・。」
ソッと多々良の髪に触れる仁多。
多々良は少し戸惑っていたようだが、仁多の為すがままにされていた。