第5章 誕生日
11月7日。
本日はひこ、伏見猿比古の6歳の誕生日である。
いそいそと猿比古が起きないようにベッドから降り、怜は服を着替えてリビングへ降りる。
あぁ、もう1年もこの家にいるのか。
なんて思いながら、怜は猿比古が起きる前に準備をしてしまおうと家の中を歩き回った。
猿比古が目を覚ますと、そこには誰もいなかった。
のそのそと起き上がり、寝ぼけたまま服を着替えてリビングへと降りる。
すると、怜がひょっこりとキッチンから顔を出した。
怜「おはようひこ。ちょっと待っててね。」
とだけ言い残すと再びキッチンに引っ込んだ。
猿比古はと言うと、睡魔との格闘に忙しく、椅子の上でうとうととしていた。
怜「お待たせ!ひこ!」
机の上にコトリと置かれた箱。
猿比古はきょとんとして怜を見る。
怜「誕生日、でしょ?」
猿比古「・・・怜が、用意してくれたのか?」
怜「うん。」
猿比古が箱を開けると、そこには大きなスズメのぬいぐるみ。
猿比古「・・・。」
怜「ひこ、枕抱きしめて寝てるから抱き枕にと思って。」
そこで、猿比古はスズメの首にかかっているものを見つけた。
猿比古「・・・これ、スズメの?」
怜「ひこのだよ?」
猿比古「・・・俺がつけて、いいのか?」
怜「うん。ひこのだもん。」
スズメの首に巻いてあったのは、青い石のネックレス。
猿比古「・・・ありがと。」
怜「いえいえ!ひこ、誕生日おめでと。」
にっこりとそう言ってくれる怜。
誕生日も、案外悪くないかもな、なんて猿比古は心のどこかで思った。