第28章 帰還
アンナ「・・・。」
アンナはジッと多々良を見つめていた。
何か思いつめたような顔をしている十束。
アンナ「・・・タタラ。」
多々良「・・・ん?アンナ、どうかした?」
アンナ「平気?」
多々良「うん。俺は平気だよ。」
ニコニコといつものように笑う多々良に、アンナはこれ以上なにも言えなくなってしまった。
多々良「・・・。」
仁多。実の兄。3つくらいしか変わらない兄。
あの頃は、二人とも生き延びる力なんてなくて、でもそれでも生きていくために二人で何とかしようとしてたんだっけな・・。
結局、俺は引き取られちゃって、仁多の行方が分からなくなってた。
ずっと探してた。でも、吠舞羅に入っても仁多の情報は何一つ入ってこなかった。だから、諦めてた。
けど、会えた。
敵同士だけれど、また会えた。
“多々良はいい子だからね~。いい相手が見つかるはずだよ。俺とは違ってね。”
そう言って、よく頭を撫でてもらったっけな。
あの時の言葉は、今でも全て理解出来たわけじゃない。
仁多と俺は、何が違うのだろう?
年齢くらいしか違わないような気がする。
だからだろうか。
自分から戦うと言ったのは生まれて初めての事かもしれない。
草薙「正気か?十束。」
多々良「正気だよ、草薙さん。俺は仁多の相手をしたい。」
草薙「相手がどんな能力を持ってるかもわからんのにか。」
多々良「・・・うん。それでも、俺は仁多と1対1で会いたいんだ。・・・戦わないといけなくなったら、その時は戦う。」
草薙「・・・さよか。わかった。けど、無茶はするなや。」
多々良「うん。わかってるよ。」