第3章 親
珍しくその日、仁希は家で眠った。
大きなベッドに、猿比古、怜、仁希と並んで寝た。
翌日、怜は物音で目を覚ました。
ぱちり、と目を覚ますと、目の前では猿比古が静かに寝ていた。
反対を向けば、仁希はすでにいない。
いそいそと先日仁希が買ってくれたうさぎの着ぐるみパジャマを着たまま部屋を出る。ちなみに、怜の要望で猿比古も色違いのパジャマである。
「あの子何!?誰の子よ!!何でこの家にいるの!!」
「朝っぱらから起こしてそれかようっせぇな。」
女性の癇癪をあげた声と、仁希の声。
キィとリビングの扉を開ける怜。
仁希「・・・怜、起こしたか。」
「・・・貴女、怜って言うのね。父親はコイツ?で、母親は?」
怜「・・・お父さんもお母さんも、家もないよ?」
至極当たり前であるかのようにそう返す怜。
「・・・は?」
当然、女性はぽかんとする。
怜「ひこが、私を見つけてくれたの。何もない私に、居場所を、くれたの。」
ぐっと拳を作る怜。
怜「仁希の子供じゃない。お母さんも、お父さんも、私にはもう、いない。」
思い返さないようにしていたあの日の事を思い出し、ポロポロと涙が怜の頬を伝う。
「・・・ごめんなさい、私の口が悪かったわ。私は伏見木佐。猿比古の母親よ。」
怜「・・・怜。」
木佐「・・・怜ちゃん。貴女は、猿比古が連れて来たの?」
怜「ひこと、一緒にいたい。」
ポロポロと泣きながら、怜は言う。
この家の子じゃないから、追い出されるかもしれない。そんな事は結構前から思っていた。でも、まだ、猿比古といたい。
「・・・怜、泣かしてんじゃねぇよ。」
ぱっと振り向けば、凄く凄く不機嫌の猿比古。
怜「ひこ・・・。」
猿比古「あんな奴ら、放ってていい。」
クイッと引っ張られ、猿比古に連れられて部屋へ戻って行く怜。
木佐「・・・あの子が、ねぇ・・。」