第1章 黒い部屋
窓から見えるのは青色のみ。
部屋は黒い壁で覆われ、黒い天蓋付きの黒いベッド、黒いクローゼット、黒い机、黒い椅子、黒いカーペット、黒いカーテン、黒いパソコン。全てが黒で揃えられた、それでいて気品のある部屋。
その真ん中で白い丸い何か。
「怜様。」
ウサギのお面を被っている人物がそう呼ぶと、その白い丸い何かはこちらを向く。
白髪のようにも見える透き通るような銀髪は彼女の身長とほぼ同じ。カーペットに座り込んでいるために床に髪がついてしまっている。幼い顔立ちで、可愛いと言われる分類に入るであろう。大きな瞳は彩度の低めの青色である。
服装はベージュのニットのミニワンピに黒のタイツを履いている。
手元に抱えているのは怜とあまり身長の変わらない大きなクマのぬいぐるみ。
「検診のお時間です。ご準備をお願いいたします。」
怜「・・・ヤ。」
そう言うとぷいっとそっぽを向いてしまう怜。
「怜様、お身体に何かあったら大変ですので・・・。」
怜「ヤ。」
ウサギは何とか怜をなだめようとするも、怜はフイッとそっぽを向いたままである。
怜「・・行かないもん。」
少女の右目のすぐ下には、十字架に羽を生やしたような模様がある。
少女は怜。5歳である。